2011年1月14日金曜日

月夜の浜辺

月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。

それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂に入れた。

月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。

それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
   月に向つてそれは抛れず
   浪に向つてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。

月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁み、心に沁みた。

月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?


この有名な詩も亡き愛児に捧げてつくられた。「月夜の晩に」は夜が明るく、照らされた海も静かであることを連想させる。そしてボタンが一つ落ちていた。月のかけらか、まん丸いボタンが。とすれば満月か。
拾ったボタンが文也のものならどうしよう。指先に、こころに深く感じるものがあれば、どうしてそれが、捨てられようか?

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