2011年1月3日月曜日

「少年時」 私は生きてゐた!

黝(あおぐろ)い石に夏の日が照りつけ、
庭の地面が、朱色に睡つてゐた。

地平の果に蒸気が立つて、
世の亡ぶ、兆しのようだつた。

麦田には風が低く打ち、
おぼろで、灰色だつた。

翔(と)びゆく雲の落とす影のように、
田の面を過ぎる、昔の巨人の姿――

夏の日の午(ひる)過ぎ時刻
誰彼の午睡(ひるね)するとき、
私は野原を走つて行つた・・・・・・

私は希望を唇に噛みつぶして
私はギロギロする目で諦めてゐた・・・・・・
噫(ああ)、生きてゐた、私は生きてゐた!

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