ひからびたおれの心は
そこに小鳥がきて啼き
其処に小鳥が巣を作り
卵を生むに適していた
ひからびたおれの心は
小さなものの心の動きと
握ればつぶれてしまひさうなものの動きを
掌に感じてゐる必要があつた
ひからびたおれの心は
贅沢にもそのやうなものを要求し
贅沢にもそのやうなものを所持したために
小さきものにはまことすまないと思ふのであつた
ひからびたおれの心は
それゆゑに何はさて謙虚であり
小さきものをいとほしみいとほしみ
むしろそのぼうれい(暴戻)を快いこととするのであつた
そして私はえたいの知れない悲しみの日を味つたのだが
小さきものはやがて大きくなり
自分の幼時を忘れてしまひ
大きなものは次第に老いて
やがて死にゆくものであるから
季節は移りかはりゆくから
ひからびたおれの心は
ひからびた上にもひからびていつて
ひからびてひからびてひからびてひからびて
――いつそひわ(干割)れてしまへたら
無の中へ飛び行つて
そこで案外安楽の暮せるのかも知れぬと思つた
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