昭和11年11月10日、長男・文也病没。
中也は詩集『在りし日の歌』の原稿を小林秀雄に託して死んだ。昭和12年10月22日、享年30歳。小林は友として翌年これを刊行する。
またひとしきり 午前の雨が
菖蒲のいろの みどりいろ
眼うるめる 面長き女
たちあらはれて 消えてゆく
たちあらはれて 消えゆけば
うれひに沈み しとしとと
畠の上に 落ちてゐる
はてしもしれず 落ちてゐる
お太鼓叩いて 笛吹いて
あどけない子が 日曜日
畳の上で 遊びます
お太鼓叩いて 笛吹いて
遊んでゐれば 雨が降る
櫺子の外に 雨が降る
六月の雨が家屋のトタン屋根を叩きます。亡き児の霊がお太鼓叩いて、笛を吹いて、そして雨は降ります。
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